江戸 雪


釉薬を身体(からだ)に巻きて佇つごとし近づくわれをかすか怖れて

島田幸典『no news』(2002年)

釉薬。陶磁器などを作るときに塗られるうわぐすり。
陶磁器の様相はこの釉薬の化学反応によって決まる。釉薬をかげんすることによって色、艶、模様の楽しみがうまれるというわけだ。
また、素焼きは水分を吸収するが、釉薬を塗ることによって耐水性が高まる。つまり素焼きより、水分が中に浸透しにくくなるのだ。

もし、身体にこのような釉薬を帯びたようなひとがいたら。
この比喩は「かすか怖れて」にとてもうまくつながり、納得してしまう。なんとなく拒絶の空気がそのひとを覆っているのだ。

好意を持つと、そのひとを知りたくなる。知るためには近づくしかない。少しずつ様子をみながら近づいていく。すると「われ」の繊細なアンテナが反応する。
このひとは怖れている、と。
ひそやかに抱く好意を見抜かれてしまった戸惑いと、自分を「恐れ」を感じる相手として意識されているという実感。
恋のはじまりとは、たしかにこんな感じだった。

次のような歌とならべてみるとまた楽しい。

菜の花の黄溢れたりゆふぐれの素焼きの壺に処女のからだに  水原紫苑