我が植えし梅の木なれど我よりも先に老いたるごとく立ちおり

『いま二センチ』永田紅

 樹木はいったいに人間より永く生きるが、梅の木の寿命はどのくらいなのだろう。苗木を植えた梅が作者の歳月を追い抜いて、すでに「老いたるごと」き風情をしているという。たしかに梅の木の樹皮は黒褐色にごつごつしているので、「老い」の姿は見やすい。しかもそれが「我が植えし梅の木」なので、古木のような風情がいよいよ気にかかるのである。
早春に、葉に先だって開く梅の花は香気が高く、平安時代にはその香が愛され、また人の歳月を花に重ねるようにして多く詠まれた。この一首も、梅の木と自身の歳月を並べるという形では同じであるが、そこに花も香も歌われていないことが新鮮に感じられる。この歌の後には〈手遊びに五つの円を描きたれば梅のかたちになりて華やぐ〉とあり、ここにも伝統的な梅の情緒とは別の、「手遊び」という日常の中の「梅のかたち」が新しい。二〇二三年刊行の第五歌集。

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