あれぬ日のゆふべの空はのどかにて柳のすゑも春ちかくみゆ

                                            永福門院

 

きびしい冬だけれども、天候のおだやかなある日、夕方の空はなんとなくのどかで、
柳の枝の先にも春が近づいているようだ――。

 

お正月はいかがお過ごしでしたか。大荒れの天候のなか年を越された方も
多いかもしれません。私は帰省先で、珍しく積もった雪(25センチ!)に
ほ~!とおどろくばかりでした。

 

さて、今日は小寒。1年でもっとも寒い時期に入っていきます。
とはいえ、この歌のように、ふと冬のきびしさのゆるむ短い時が、確かにあるなあ
と思います。「あれぬ」がいいですね。この一言で冬のきびしさが続いていることと、
のどかな空が稀であることを表しています。柳は、枝の先に生気が表れている
感じでしょう。

 

永福門院(1271~1342)は鎌倉時代後期の伏見天皇の中宮で、京極派の歌人として
活躍しました。初めて彼女の歌を読んだとき、古典和歌にこんなに平明な叙景歌が
あったのか、と新鮮な思いがしました。こんな歌も好きです。

 まはぎちる庭の秋風身にしみて夕日のかげぞかべに消えゆく

「まはぎ」は「真萩」。夕日の光が「かべに消えゆく」なんて、古典和歌では
珍しいでしょう。「かべ」の歌い方が京極派で追究されたことがあったようです。

おもしろい歌をたくさんご紹介できますように。1年間、よろしくお願いいたします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です