池田はるみ『妣が国・大阪』
元旦の朝は、本堂前の雪を掻き、六時ちょうどに梵鐘を打つ。参詣に集う村人と一緒に正信偈でお勤めをする。北陸の平凡な村の、平凡な寺の、修正会(しゅしょうえ)の風景だ。
そんな静かな寺に、義妹夫婦が一歳になったばかりの姪を連れ、年賀に来る。それだけでなんと華やかな新年となることか。
みなさま、明けましておめでとうございます。
僕の新年は「わらべ歳神」の来訪で、実ににぎやかでした。
歳神とは毎年正月、各家を訪れる、農作と家の守護神。門松、鏡餅は歳神を迎えるためのものだ。一般的には翁の姿で表されるが、時には「わらべ歳神」が家を訪れる事もある。
「あらたまの」は「年」などにかかる、新年の意を含んだ枕詞。正月の家に、ふくふくと肥えた幼い神がやってくる。神道のめでたい神を思う歌として読んで良いだろうが、年始に集う一族が、新たに加わった乳飲み子を微笑ましく囲んでいる風景ととると、実感が深い。
「まろまろ笑ふ」が実に福々しく、正月の光をいっそう晴れ晴れとしたものに感じさせる。にぎやかに笑い、大声で泣いて駄々をこねるわらべ歳神。新年をことほぎ、「家族」の大切さを改めて教えてくれる一首。
それでは、これから一年、よろしくおつきあいください。