江戸 雪


螢(ほうたる)よどうすればいい 病む汝を取り戻すべくわれは点らむ

池田はるみ『妣が国 大阪』(1997年)

大事なひとが病気になった。苦しむひとを前にして、無力な自分を思い知る。それでも救いたい、だから考える。私になにができるだろう、と。
二句目の「どうすればいい」は、喪失感と不安に充ちたぎりぎりの言葉だ。

身のまわりを、螢が飛んでいる。実景なのか、そんな気がしているだけか。それはどちらでもいい。飛んでいるのだ。ほうたる。
その明滅は生命の息づきのようであり、また希望のありかを教えているようにもおもえる。
だから、「どうすればいい」と不安なこころは訊ねるのである。

また、「取り戻すべく」という強い意志を伝える表現にも、大事なひとへの深いおもいを感じる。病を得る、病との共存、という考えもあるけれど、そこに到達するまでにはどれほどの時間と精神力が要るだろう。正直なところ、最初はやはり当人も周囲の者も、病に侵されるという感覚を持つのではないか。そして、今の自分を保ちたい、守りたいと願う。
「取り戻すべく」には、どうしようもなく揺れ動く感情をなまなましく感じるのだ。

すこしでも気を抜けば崩れてしまいそうな心と身体を、ほうたるのように点して祈っている。
病がわたしたちをこれ以上苦しめないようにと。