もうあまり会わなくなったきみの傘も濡らしてますか今日の夕立

小島なお『乱反射』(2007年)

急に雲ってきて激しく降る大粒の雨。
夕立は、夏の夕方に多い。
局地的な驟雨を降らせる積乱雲は、寒冷前線の通過時にもあらわれるが、夏の強い日差しははげしい上昇気流を生んで、前線に関係なく積乱雲を発達させやすいせいだ。

まだ深い仲ではないけれど、頻繁に顔をあわせて、お茶を飲んだり、遊びにいったり。
そんな相手が、若いときには何度もあらわれる。
あとで考えると、ただの友達ではない、特別な間柄だった、ようにも思われる。
でも、関係が深まることなく、なんとなく会わなくなってしまった。
別れ、なんて呼べないほど、無傷なままで互いに離れていった。
「きみ」への、淡い想いがみずみずしい。

夏雲のかがやきに似た時間がふたりにはあったが、夕立のようなはげしさはついに訪れることはなかった。
出会いにはタイミングがあるから、もう一度同じ相手に会って、つきあいを再会しても、あのかがやきはきっと戻っては来ない。
そういった機微を肌で覚えるのは、少年よりも少女のほうがたぶん早い。

相合傘という言葉もあるが、ふたりでいてもふつうは一本ずつ傘をさす。
傘のなかでは基本的にみんなひとりだ。
青春という時間のなかで、みんながひとりであるように。
そしていつか忘れてしまうにちがいない、たくさんの出会いをくりかえしながら、少女は大人になる。
同じ一連にはこんな歌もあった。

  ひとりみた夕焼けきれいすぎたから今日はメールを見ないで眠る

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