石川 美南


シャボン玉まだ喜べる子がふたり 光の中に光が増える

前田康子『黄あやめの頃』(2011)

 

シャボン玉の色が変化するのは、光の波の干渉によるものである。シャボン玉の薄い膜の表面で反射した光と、膜を透過して裏面で反射した光とが互いに強めあったり打ち消し合ったりすることで、波長が変化し、色の違いとなる。膜の厚さは次第に変化していくので、色も次々に変わっていく。……と、精一杯もっともらしく書いてみたが、根っからの文系脳なので、説明が間違っていたら申し訳ない。

まあ、原理はわからなくともいいのだ(開き直った)。世界は光に溢れているが、普段、人はそのことを意識していない。しかし、シャボン玉を吹くことで光が可視化され、「光」と「色」の不思議さを、身近なものとして体感できるようになる。「光の中に光が増える」とは、シャボン玉のゆらめくような光の様子や、空に向かってシャボン玉を吹く楽しさが、的確に表現されたフレーズだと思う。

シャボン玉を吹いているのは、二人の子供たちである。「喜べる」は、「可能」(=喜ぶことができる)の意味と「存続」(=喜んでいる)の意味でちょっと迷ったが、「まだ」と言うからには、可能の意味でとる方が自然だろうか。子供たちはどんどん成長する。シャボン玉遊びに興じられる時期は、もうすぐ終わってしまう。けれども今、笑い声を響かせて遊んでいる二人の姿は、「光の中に光が増える」ように、幸福感に満ちて眩しい。

 

『黄あやめの頃』は、前田康子の第4歌集。2006年から2011年までの作品を収めている。歌集の後半には、

 

  夏祭りの灯りの消えて去年ほどはしゃがぬ娘と夜道をもどる

 

という歌もある。ちょっとした態度の変化に子供の成長を感じ取った母は、暗闇の中を、少し寂しく歩いていくのだ。

 

編集部より:前田康子歌集『黄あやめの頃』はこちら↓

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