石川 美南


紙ふぶき大成功の、安田大サーカスというひとつの星座

土岐友浩 「町」2号(2009)

 

※同人誌「町」概要は3月12日の更新参照https://www.sunagoya.com/tanka/?p=7338

 

一昨日に引き続き、「町」2号から。

 

安田大サーカスというトリオをテレビで初めて見たときの「なんだこりゃ」感は忘れられない。皆さん一度くらいは見かけたことがあると思うが、念のため解説すると、団長安田、強面なのに声が異様に高いクロちゃん、元力士のHIROという3人からなる異色のお笑いトリオで、ベタなショートコントを披露しておいて、団長が「ベタベッタ♪」「ベタでーす♪」とピースサインをしたり、クロちゃんが楽しそうに紙ふぶきを撒いたりと、ハイテンションなパフォーマンスを繰り広げるのが定番。いわゆるサーカスの要素は、特にない。

異なる個性を持つ人々の集合体を「ひとつの星座」に喩えることは、それほど珍しい発想ではない。しかし、この歌の場合は、「安田大サーカス」を意外な方向から照らしていて、不思議と新鮮に感じられた。

誤解を恐れずに言えば、安田大サーカスの面白さは、「マガイモノっぽさ」にあると思う。サーカスでもないのに「大サーカス」を名乗り、「ベタでーす♪」と明るく開き直ってみせる彼らのネタは、緻密に作り込まれたコントや、一分の乱れもない掛け合い漫才などとは対極に位置している。しかし、そんな彼らが作る偽の星座は、ささやかだが独特の光を放っている。私は特に安大ファンではないのだけれど、この歌を読んでから、何となく彼らに懐かしさを感じるようになってしまった。

ネタの必須アイテムである「紙ふぶき」と「大成功!」という合いの手(?)をさりげなく歌に取り込んでいるところもポイント。祝祭的なムードを伝えつつも、「大成功!」ではなく「大成功の、」と言いさしている辺りに、マガイモノの屈託がほんのりと込められているような気がする。

 

土岐友浩の作品としては、ややイレギュラーな歌を引いてしまったかもしれない。彼の歌の本領はおそらく、次に挙げるような、物腰柔らかく青くさい青春の歌にある。

 

  ともすれば見様見真似をくり返す考えごとが新緑を成す  「町」2号

  青梅がトタンの屋根を転がって雨がめんどうくさい昼過ぎ

  キッチンを借りて慣れないことをする夕暮れ青いニラをちぎって  「町」4号