光森裕樹


パソコンの〈ごみ箱〉に棲むテトリスをときをり呼びてまひるま遊ぶ

大松達知『スクールナイト』(柊書房:2005年)


(☜2月20日(月)「ゲーム機の世代スイッチ (4)」より続く)

 

◆ ゲーム機の世代スイッチ (5)

 

パソコンの「ごみ箱」という機能は、なんとも面白いものである。削除したファイルが一定期間保管され、一ヶ月ほどの一定期間を経て完全に削除される。誤ってファイルを削除してしまってもいいように用意されたものだが、その名称を含めて極めて人間くさい機能と言える。
 

パソコンに入っているゲーム「テトリス」を遊んでは、その実行ファイル(あるいはショートカット)をもう遊べないように「ごみ箱」に捨てる。しかしながら、しばらくは「ごみ箱」にそのファイルは残っているので、また取り出して遊べてしまう。自分の甘さはよそに、パソコンにそんな機能があるのがいけない、と言わんばかりである。
 

何度も、「ごみ箱」に捨てるうちに愛着が沸いた「テトリス」。「リス」の音が栗鼠に繫がるのであろうか、まるで生き物のように「ごみ箱」に棲んでいるように感じられてくる。呼び出しては世話をするように遊んであげているうちに、絆さえ芽生えそうだ。いずれにせよ、ながいお付き合いになりそうだ。
 

ファミコンやプレイステーションなどのゲーム専用機だけではなく、家庭や職場に普及したパソコンにもゲーム機の側面があった。当時、Windowsに標準で入っていた「ソリティア」や「マインスイーパー」などは、シンプルな内容ではあるものの世界単位で多くの人に遊ばれたゲームと言える。
 

パソコンは、文章を書くことも表計算をすることもなんでもできでるがゆえに、思わずゲームで遊んでしまうという人間くささが現れやすいものだったと言えるのかもしれない。この先どれだけパソコンが進化したとしても「ごみ箱」はそこに置かれ続けることだろう。
 
 

(☞次回、2月24日(金)「ゲーム機の世代スイッチ (6)」へと続く)