バラ肉も中華ちまきもしめ鯖も在りし日々よりここにぞ凍る

『秋隣小曲集』島田修三

 バラ肉も、中華ちまきも、しめ鯖も、いわば暮らしの匂いを濃く感じさせる食べ物である。それらすべてが、あなたが生きていた日からずっとここに凍っていると歌う。あなたが生きていれば冷凍の食品も解凍されて温かくなるのだが、いまは永遠に凍ったままだという。「凍る」ということばをつかって、伴侶を亡くした哀しみがリアルに、切実に伝わってくる。生命が無くなるということは、いわば何かが凍ってしまうことと同じであって、もちろん作者の心もであろう。
歌集を読むと、作者は突然に、不意打ちのように妻の死に出会ったという。その挽歌は多くはないが、いずれも思いの深さが胸に沁みる。「ねんごろにマニキュアしてゐし指先のその割れやすき薄き爪はも」。マニキュアと古語が一つになっているところに、この作者の哀切の調べが潜められている。二〇二〇年刊行。

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