寺院シャルトルの薔薇窓をみて死にたきはこころ虔しきためにはあらず

葛原妙子『薔薇窓』(白玉書房、1978年)

 敬虔の虔の字は「つつま(しき)」と読む。字足らずの多い作者だが、これはむしろ字余りの破調。寺院シャルトルはフランスのシャルトル大聖堂をさす。幸い、シャルトルのほうはパリのノートルダム大聖堂と違って、火災に遭わずに済んでいる。薔薇窓はステンドグラスである。
「薔薇窓をみて死にたき」は、「せめてあの美しい薔薇窓を一目見てから死にたい」ということなのだろうが、むしろ「薔薇窓を見た瞬間、その美しさに撃たれて死んでしまいたい」のほうがより不敬虔な感じがして、葛原のうたうキリスト教モティーフの不穏な感じに似つかわしいような気がして、自分ではそう読むようにしている。