橋爪志保『地上絵』(書肆侃侃房、2021年)
きみのげん/つきのミラーは、とかるく切りながら読んだ。
原付というのは原動機付き自転車、モーターバイク。小さい乗りものである。車道のわきを走っている。車と同じように、ミラーがある。免許を持っていないので詳しくないが、うしろを見るためのものだろう。うしろというか、自分の視野のそとのもの、正面には見えないものを、見るためにある。ふつう、乗っているひとのためのものである。
そのミラーが、きみのは「まるいやつ」だという。四角いのとかほか多角形のものもあるのだろう。車のサイドミラーとかバックミラーとか(今ことばをおもいだしてきた)は、なんとなく四角いイメージがある。今度じっくり見てみよう。「まるいやつ」もそのなかま。かわいい感じだ。
それでそのミラー、「今度のぞいて映ってみよう」というのがたのしげでいい。「まるいやつ」だからか、「きみの」原付のミラーだからか。乗るわけでもなく、ただそこに映り込んでみたい、ということなのだ。きみの視界にじかに入るわけではないけれど、でもミラーをとおして間接的に目が合う。目が合わなくても、きみの景色のなかに入り込む。いいなあ。