風呂場より走り出て来し二童子の二つちんぽこ端午の節句

『金色の獅子』佐佐木幸綱

 五月五日の端午の節句が近づくとこの歌を思い出す。菖蒲湯からあがって、裸のまま走ってきた息子たちは、清涼な菖蒲の香をまとっていただろう。その「二童子の二つちんぽこ」といういきいきとした言葉の楽しさ。時は五月、初夏の明るい夕刻であろう。むろん「二童子」という古語の力も大きい。そうしていまの暮らしの風景が、「節句」という長い伝統の時間と地つづきであることを、生きる歓びとして気づかせてくれる。この歌集には「父として幼き者は見上げ居りねがわくは金色(こんじき)の獅子とうつれよ」という作者の代表歌がある。端午の節句の童子たちを見つめる父は、またその童子たちから「金色の獅子」と見られることを願っているのだ。この父と子の輝くまなざしが眩しい。『金色の獅子』は一九八九年の出版。

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