しそジュースかけたかき氷をくづす冷房のない島の波止場で

秋月祐一『この巻尺ぜんぶ伸ばしてみようよと深夜の路上に連れてかれてく』(青磁社、2020年)

 

「冷房のない」「波止場」であるから、島の港のフェリー乗り場かどこかそういう場所を想像する。このうたを含む一連は、夏ということでゆるやかにうたがつながっていて、今日の一首も、そんな夏の一場面として読んだ。

 

しそジュース/かけたかきごほ/りをくづす/冷房のない/島の波止場で

 

二句、三句にかけての句またがりが、かき氷に匙さしてがりがり削って掬っていく、あの感触を呼び起こす。そこに「かけた」「かき氷」「くづす」のカ行の頭韻が添う。氷の山を崩していくときの、その氷の質感さえ浮かんでくるようだ。

 

小さな島の、小さな波止場だろう。冷房もなく、日陰を選んで島の風にあたる。夏は暑い。あるいはどこにも日陰がない。かき氷でも食べていないとやってられない、といったところか。海にとびこんで遊んでいるひともいそうな感じ。

 

「しそジュース」という味が絶妙だ。はなやかなところ、うわついたところがなく、ごく日常的な光景として、この場面を受け取った。ここに暮らすひとのようでもあり、あるいは観光で来ていたとしても、どこかこの空間にしぜん馴染んでいくような、そういうひとりの姿をおもう。

 

波止場ということばが指すところは、存外曖昧である。そのことばの大きさ(小ささ)が、想像を搔き立てる。あるいは突堤にすわりこんで海へ足なげだして。夏の眩さこもる一首である。

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