ホームページ・ミクシィ・ツイッター・ズームなど渡り来し我は歌人うたびとである

『蜘蛛の歌』奥村晃作

 ホームページ、ミクシィ、ツイッター、ズームと、ネット社会ならではの現代コミュニケーション術を使ってきた作者。「渡り来し」とあるので、多少勢い込んでそれらを駆使して来たという気分があるのだろう。八十代後半の作者である。そして最後に「我は歌人である」と宣言を置く。では「歌人」とは何か。

新しい言葉が世界を駆けめぐり、瞬く間に自分の水際まで押し寄せる。いったいどれほどの言葉が一年のうちに生まれ、滅びるのか。そうした新来の言葉と、それを伝える情報技術の氾濫のなかで、歌人はどういう言葉を紡いでいこうとするのか。歌人とは、いわば、文体を持つ言葉の達人である。スマートフォンのなかを流れる歌との重量の違いもそこにあるだろう。それにしても「蜘蛛の糸」という歌集名はなかなか意味深い。自らの歌言葉がネット社会のなかで、あたかも蜘蛛の糸のように絡めとられる危機の表明でもあろうか。

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