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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
佐藤 弓生
婚解きしこと語り終え白ワインボトル二本を友と空けたり
そして冬、虚[そら]もそぞろにしぐれ降りなにもなき日を鎮もる家群
青ふかく引かるるままに落ちてゆく からだしづかに浮かびはじめぬ
圏内に囚われ住まう禽獣の自死の思惟なき眼[まなこ]あかるし
消し去るための過去などあるな君の部屋のグランドピアノ黒鍵ばかり
大おつとせいの鳴声みちたり益良雄のこらへかねたる酔泣のごと
ひとりぶん伏せて置かれたお茶碗がちいさいものを匿う夜だ
無音なる世界にをればわが耳は常人のごと健やかなりぬ
きらきらと衰え朽ちてゆくものを見よと指さす、指も滅べよ
銭湯が飯屋に化けるその町に黄花コスモス盛りなりけり
さまざまなわれを束ねてわれはあるわれのひとりが草笛を吹く
深呼吸は猫抱きしめて 猫の体[たい]遠くなつたり近くなつたり
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