山埜井喜美枝『はらりさん』(2003年)
父が見残した夢、そこにどんなことが思われているのだろう。
父という人が、一生をかけて追ったそののちのもの、というよりむしろ、どこか途方もないところに行きたかった、というような、生の実体から離れたものを思いたい気がする。
「咲きいそぎたる」というフレーズが、せつない。
はやばやとひらいて、雪を受ける梅。夢は夢として残るほかなかったはかなさが、そこにあわあわと重なる。
たくさんの「の」につながれて、父のなくなった後もあとをひくような「夢」は、いま娘に思われて香るようだ。
梅は紅いような気がするが、輝くような白を思うのもわるくない。