大ぶりの椀にたつぷり雑煮して謹賀新年ひとり正月

『あさげゆふげ』馬場あき子

「たつぷり」の雑煮を「ひとり」で食べるという光景に、こちらの姿勢もしゃっきりと正される一首である。三が日に食べる雑煮は、地域や家庭によって味はさまざま。餅も四角であったり丸であったり。具は大根,人参、茸、青菜や、鶏肉、鰤、牡蠣など土地の産物を入れ、さらには餡餅を入れる地方もある。雑煮は年明け初めての若水と初めての火をもって炊き、前年の収穫への感謝と今年の豊作を願って神とともに食べるハレの食べ物であった。この歌の「大ぶりの椀」や「たつぷり」には、食材や、量の多さのみではなく、そのような農耕社会の伝統や文化も含まれているだろう。その豊穣さを「ひとり正月」で迎える姿に、きりりとした空気がただよう。『あさげゆふげ』(二〇一八年刊)の一首。

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