コンテンツへスキップ
砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
月:
2011年3月
心底をのぞけば仏像を彫る男ゐて折々の鑿(のみ)が光れり
しづけさは座卓のしたのゆふぐれの猫のぬくもり右腿に添ふ
美(は)しきもの告げるにはやき仲なれば沈む夕陽は沈ませておく
蒲団より片手を出して苦しみを表現しておれば母に踏まれつ
まもなく君が帰り来る夜を見つめたり あをあをと埃のやうな月光
こんなにも赤いものかと昇る日を両手に受けて嗅いでみた
若ければジゴクノカマブタという花のつまらなく咲く春の畔道
口にしないすべてのことを受けとめるようにシチューが並ぶ食卓
おーい列曲がつてゐる、と言ひかけて 眼(まなこ)閉ぢれば春の日はさす
知る人ぞ知る体温として残れかし辞書への赤字を日々に重ねて
投稿のページ送り
前のページ
固定ページ
1
固定ページ
2
固定ページ
3
次のページ