吉田 隼人


逆光の鴉のからだがくっきりと見えた日、君を夏空と呼ぶ

澤村斉美『夏鴉』(引用は山田航編『桜前線開架宣言』左右社:2015年)

短歌で君が出てきたら恋人のことだよ、と早稲田短歌会に入って割とすぐの頃に教えられて、何か釈然としないものを感じたのを覚えているが、それはいまでも続いている。この歌で言えば「夏空」と呼ばれた「君」は逆光の鴉のことだと読みたくなってしまう。なので、今回もそのように読ませていただく。

逆光に照らされながら、もともと黒いカラスがさらに黒く影になり、夏の日差しのなかでくっきりとあらわれる。その向こうには夏の青空があって、その空と光をすべて領るすようなカラスを「夏空」と尊称のように呼ぶ。

くっきりと輪郭づけられたからだを持つ夏の朝のカラス。彼を(と勝手に雄のカラスにしてしまったが)夏空と呼ぶのは生き物に対する畏敬の念からであろう。

「くっきりと見えた日、」と区切られているから本当は鴉ではなく誰か別の人間を夏空と呼んでいるのであろうことは承知しているのだが、敢えて今回は「鴉読み」で通させていただいた。