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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
澤村 斉美
冬椿、手ふれて見れば凍れるよ、我が全身ををののかしめて
外(と)にも出よ触るるばかりに母のゐて教へたまひしやしやぶしひかる
去年の冬のわが知らざりしわれとして来て蠟梅の香(かう)にまじりぬ
夥しき未知の箪笥の育ちゐる林と思ふ雨水の午後に
はくれんの花閉ぢかけて閉ぢきらぬ春宵ながく返事を待てる
カーテンに春のひかりの添う朝(あした)はじめて見たり君の歯みがき
日にうとき庭の垣根の霜柱水仙にそひて炭俵敷く
看板に〈傍観者〉とありときをりは店主が出でて小窓を磨く
中庭にはたんぽぽ長けているばかりホムンクルスが薄く目をあく
とつぷりと暮れたる街に漕ぎ出だす身はよるべなき遺伝子の船
春立つとけふ精神のくらがりに一尾の魚を追ひつめにけり
「それは何か」ともう食べぬ亡父の声したり巨峰もて闇をよぎりゆくとき
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