澤村 斉美


はくれんの花閉ぢかけて閉ぢきらぬ春宵ながく返事を待てる

紺野万里『星状六花』(2008年)

「はくれん」は広辞苑によれば①白色の蓮の花。びゃくれん。②ハクモクレンの別称 とある。この歌は「春宵」とあるので②、春に咲くハクモクレンのこと。枝の先に上向きに開く真白な花は、公園でよく見かけるし、街路樹になることもある。私の通勤路にもハクモクレンの並木があるが、3月の終り、桜よりも先に会える春の花として慕わしい。青空に映える花の白とあまい香りに立ち止まる。

掲出歌の「春宵」という時は絶妙だ。ハクモクレンは、日が当たると開き、夕方になると閉じる。ハクモクレンの花の閉じるころ、まだうっすらと明るく、妙に時の流れがながく感じられる宵の頃合い、私は返事を待っている、というのだ。「閉ぢかけて閉ぢきらぬ」は、花弁の先がぴったり合わさらずに、うっすらと口を開いているような印象を与えるハクモクレンの形を言いあててもいるし、「閉じかけ」から「閉じきる」までなかなかいかない、時間の長さをじれったく思う感じも出ている。

このじれったい感じが、恋の一場面を思わせる。携帯電話のメールの返事を一人で待つ、そんな春の宵の歌として読んだ。

そろそろ春が恋しくなってきたこの頃だ。