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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
カテゴリー:
一首鑑賞
秋風(しうふう)に思ひ屈することあれど天(あめ)なるや若き麒麟の面(つら)
寂しさに海を覗けばあはれあはれ章魚(たこ)逃げてゆく真昼の光
曖昧なることばに輕く手をあげて昭和天皇いづくにゆきしや
喫茶より夏を見やれば木の札は「準備中」とふ面をむけをり
うつぶせに眠る娘の背に落ちて月のひかりはまだ新しい
父を支へて歩めば老人のにほひせり不機嫌に垂るる時間の匂ひ
ポケットに電球を入れ街にゆく寸分違はぬものを買ふため
夜半すぎてこころのしまりくるときのこの真顔(まがほ)ひとりわれのみぞ知る
名殘(なごり)とはかくのごときか鹽からき魚の眼玉をねぶり居りける
ことばもて君をのぞけば月蝕のにおいのような遠いくらがり
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