Archive for the '今日の一首鑑賞' category

厨辺にぽとりぽとりと水おちてうつぶせのごとく冬に入るなり

雪の上に影ひきて立つ裸木に耳を当つれば祖父おほちちのこゑ

掃除機は仰向けのままひかれをり「ずぼらやなあ」と叱られながら

不安げなる顔して病室に入りくるむすめよここだ父はここにゐる

農機具のレバーを握る夜の夢しょうがねぇなァ田園を刈る

吾子わこ遠く置きし旅の母の日に母なき子らの歌ひくれし歌

猫の腹に移りし金魚けんらんと透視されつつ夕日の刻を

我ならぬ生命いのちの音をわが体内みぬちにききつつこころさびしむものを

お酒呑みません煙草吸いません運動しません すみません

薄翅に触れないように湯上りのおさなをタオルで包む 秋くる

新潟のさといもぬめるしっかりとここで暮らして雪を見なさい

くちびるは言葉をさぐるふりそそぐ秋の光のさはれないもの

香りさえ想像されることはなくりんごはxみかんはyに

もやの中ひかりて落ちるいくすじの分れてた会う光いくすじ

歩きつつ本を読む癖 電柱にやさしく避けられながら街ゆく

関節のやはき指もて髪の根を洗はれてをり今日は立冬

この空に数かぎりない星がありその星ごとにまた空がある

水の輪が水の輪に触れゐるやはらかなリズムのうへにまた雨が降る

恋愛が恥ずかしかった夏 海を見るためだけに海に出かけた

柿の実のびつしりとつく木の下に落葉みづみづし厚く積もりて

観賞用金魚百匹と日を送る 観られているのは吾かもしれず

ふと思ふ我を見守るあたたかき心に気附かず過ぎしことあらむ

嘘ではない、嘘ではないがどこまでも滑らかである彼の言葉は

台風の母は海なればゆりかごは大きく大きくそして濃き青

夜のでんしやに「もうだめだな」といふ人あり雨の言葉のやうに沁みくる

コスモスがもつれて咲いている駅にしゃがめば澱む夕影の中

ベランダの手摺りに砂の残りいる会わぬと決めし人の掌のごと

秋明菊のひとつの花をめぐり飛び去りて行きたるしじみ蝶ひとつ

<先に行く PM3:00> かかわりのない伝言の前を過ぎてく

降ってきたよと言いながら窓を閉めてゆく 急に二人の部屋になりゆく

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