Archive for the '今日の一首鑑賞' category

〈柿死ね〉と言つてデッサンの鉛筆を放り出したり娘は

くちばしを開けてチョコボールを食べる 机をすべってゆく日のひかり

何故ああであつたか 神の沈黙は押し入つてくる扉閉めても

炎天に悲しい胸が光るまで僕はあなたと広場に立てり

コマーシャルのあひだに遠く遅れたるこのランナーの長きこの先

天皇が原発をやめよと言い給う日を思いおり思いて恥じぬ

藤棚のやうに世界は暮れてゆき過去よりも今がわれには遠い

尽くすほど追いつめているだけなのか言葉はきみをすずらん畑

勢ひのある白雲よ一色(ひといろ)のからだすみずみまでうごくなり

買い被られているようであり馬鹿にされているようでもある真冬の西瓜

不自由に生まれたかったカーテンの卵弾けて蜘蛛が溢れる

いろいろなときにあなたを思うだろう庭には秋の花が来ている

腕時計くるひ始むるまひるまにゆるく人だかりに分け入りつ

残雪は砕いたオレオをちりばめたバニラアイスでもうすぐきえる

生卵片手で割れば殻だけはこの手に残るきっともう春

きさらぎの雪にかをりて家族らは帰ることなき外出をせよ

人のために使ふことなしひと月を流れていきしお金を思ふ

なんと俺、短い名前がだいすきで「手」と名乗る女の胸を揉む

おびただしい黒いビーズを刺繍する死よその音を半音上げよ

薔薇色の馬ゑがきたるワンピース着たるをみなごちちははを捨てよ

たてがみに触れつつ待った青空がわたしのことを思い出すのを

秋分の日の電車にて床(ゆか)にさす光もともに運ばれて行く

たてがみに触れつつ待った青空がわたしのことを思い出すのを

降圧剤一錠を嚥む夕まぐれ 五階まで来た蟻を祝へり

白き雲流れゆくなり 雲梯を這って渡ったこと一度ある

男の子となかよくなって飲みに行く帰りに光るサンリオショップ

光る川 光る欄干 君は今日光ったものを忘れるだろう

くらがりにわがみづからの片手もて星なる時計を腕より外す

チチチチと鳴いてゐるのかこの小鳥握らばきつと温かならむ

豚のいる村があってハムになるめぐりしずかに夕焼けてゆく

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