Archive for the '今日の一首鑑賞' category

薄暮光けふは世界に触れ過ぎた指が減るまで石鹸で洗ふ

死にいたる瞬間(とき)までつよくやくされし首さながらに ああ はるがくる

あの人が住む方(かた)より吹く風なれば風吹くだけで腫れる唇

背をのばし歩かうとしてさびしいな袋のやうな身体をはこぶ

何をしていても過ぎゆく風景に蝶番あり時折ひらく

鯉がいて、立ち止まったらそれらしい速さで鯉は流れて行った

茸、セロリ、豆腐など手に持つわれがわづかに冷ます白日の都市

ガードレールに白く汚れた手のひらを黙っておくということ罪は

まだきみに何か期待をよせていて崖の間際の街くずれそう

体調のすぐれぬ妻に付きまとい世話をしたがる息子を叱る

クリスマス・ソングが好きだ クリスマス・ソングが好きだというのは嘘だ

わたしより年上の馬世におらず今年も坂道(ここ)に木漏れ日がある

小松菜が値引きをされて横たわるかたわら過ぎてふと立ち戻る

たまり水が天へかえりてかわきたるでこぼこの野のようにさみしい

人間のふり難儀なり帰りきて睫毛一本一本はづす

怒るより先に悲しくなる人はうつむいて咲く花 みずいろの

逆になりふたたびはじまることさえも砂時計に似た裸体を抱く

体から恋の抜けゆく感じせり雪降り初(そ)めし窓をひらけば

高校の夢を見ており 竹内が群れからはなれわが部屋の戸に立つ

とても長い時間をかけてお互ひの心情を知つたからには別る

遠き雲の地図を探さむこの町をのがれむといふ妹のため

思うひとなければ雪はこんなにも空のとおくを見せて降るんだ

鉄のよこたわる雨野をぬけてきたような声もつ不在者あなた

白鳥と太陽が呼吸をとめる一瞬のまぶたのようにあなたであった

玉乗りの少女になってあの月でちゃんと口座をつくって暮らす

さからはぬもののみ佳しと聞きゐたり季節は樹々を塗り籠めに来し

「オレが今マリオなんだよ」島に来て子はゲーム機に触れなくなりぬ

猫をわが全存在でつつみ抱くともだちになつてくれたら魚をあげる / その②

みづうみは夢の中なる碧孔雀まひるながらに寂しかりけり

猫をわが全存在でつつみ抱くともだちになつてくれたら魚をあげる / その①

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