Archive for the '今日の一首鑑賞' category

相槌を律義に打ちて馴(な)寄りくる生徒ありわれは何も与えず

あらくさにしんしん死んでゆける夏黄のフリスビーと毛深き地蜂

おびただしき水仙の白咲かしめてケアホームの庭 愛は片寄る

カバに手を掛けてるヒトが穴だった顔はめパネルやればよかった

妻の傘にわが傘ふれて干されゐる春の夜をひとりひとりのねむり

階段の底までくだり昼くらきコーヒー店に来てまづ眠る

金箔のきらめきこぼし角を曲がる霊柩車なし冬至のまちに

足裏より夏来て床に滴りしすいかの匂いまばゆい午後だ

宇宙から見れば今死ぬ吾の手が今死ぬ母の手を握りをり

峠から無限にひろがる星空に吸えないタバコをすわされそうで

母死なすことを決めたるわがあたま気づけば母が撫でてゐるなり

コーヒーの湯気を狼煙に星びとの西荻窪は荻窪の西

春の船、それからひかり溜め込んでゆっくり出航する夏の船

雪を踏むローファーの脚うしろから見ていて自分が椿と気づく

担架にて運ばれおらぶ父の声妹は録りいまだに聞かず

夕照はしづかに展くこの谷のPARCO三基を墓碑となすまで

ドアの窓の真ん中にレモンドレッシングの広告はあり手のひらほどの

セイムタイム セイムチャンネル セイムライフ 悪夢の続きだったとしても

さうめん流しひゃーとさうめん流れゆきわれとわが母取り残されぬ

pianist 左手にキウイのいろと右手にストロベリーの色と

ことば持つゆゑのさびしさ人を恋ふにもあらざれど猫にもの言ふ

差し向うさびしさしりて一脚の椅子とむきあう相聞歌篇

海だったはずのシャワーを浴びている さっきまでふたりがいた海の

秋になれば秋が好きよと爪先でしずかにト音記号を描く

心いま針のようなりひとすじの糸通さねば慰められぬ

バレリーナみたいに脚をからませてガガンボのこんな軽い死にかた

目印に名前のシールではなくてばんそうこうを貼る友がいる

噴水が今日のさいごの水たたみ広場に蝶やダリアさまよう

ねむたさとさびしさをよりわけたあとねむたさに寝る 春の新月

春の日のななめ懸垂ここからはひとりでいけと顔に降る花

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