Archive for the '今日の一首鑑賞' category

たてがみに触れつつ待った青空がわたしのことを思い出すのを

降圧剤一錠を嚥む夕まぐれ 五階まで来た蟻を祝へり

白き雲流れゆくなり 雲梯を這って渡ったこと一度ある

男の子となかよくなって飲みに行く帰りに光るサンリオショップ

光る川 光る欄干 君は今日光ったものを忘れるだろう

くらがりにわがみづからの片手もて星なる時計を腕より外す

チチチチと鳴いてゐるのかこの小鳥握らばきつと温かならむ

豚のいる村があってハムになるめぐりしずかに夕焼けてゆく

みぎの手をそらにかざしてうたふこゑ君はやつぱり晴れをとこゆゑ

右眉の白髪一本切りたくて鏡のなかに入りゆく鋏

僕は今幸せのはず膝に来てアリ三匹が遊んでいるし

牛乳が切れたら次の牛乳をあぶない橋をわたるみたいに

足元にさっき落としたふでばことそこから散ったひとときの色

ぼくの窓をかるくすりぬけ日本語のてざはりのない女の子たち

足のうらを剝がし剥がしてゆくことを歩くと呼べり生きると呼べり

義母のよそうご飯かと思い振り向けば紫陽花白く低く咲きおり

たちまちに声のみとなり行く鳥のゆふやけぞらの喉ふかくゆく

がんばったところで誰も見ていない日本の北で窓開けている

ざつとまたひと雨あらん包丁に水よくなじむ夏のゆふぐれ

チーズ濃く香る朝なり遠景に書物のごとき森ある九月

傘を差さなくていいほどの雨が降るという気象予報士の目を見てしまう

乳首透けたる服を纏へるをみならをよぎりて耳の無きゴッホまで

飛来するトンネルの穴つぎつぎに生きているまま吸いこまれたり

側溝を流れゆく水着脹(きぶく)れて家鴨(あひる)のような私を映す

新しい人になりたい 空調の音が非常に落ち着いている

月へするおびただしき數のアクセスとその切斷のお月見のよる

草臥れて立ち上がれない夜もある会社近くのドトールの隅

ドーナツに埋めようがない穴がありこんな時間に歯を磨いてる

ドーナツに埋めようがない穴がありこんな時間に歯を磨いてる

泣き濡れているのはわたし高いビル全部沈めて立つのはわたし

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