2017年08月のアーカイブ

飼い主にしたがう犬が家々のこぼれ灯拾い夕暮れを行く

でもそれでいいんだとてもみぞれ降る二月のことを聞かせてほしい

鷺のかげ湖岸の砂に淡かりき少し離れて二羽又一羽

年末の十億円が当たったら/当たらなくてもバイトは辞める

安曇野と筑摩野分けて夜の明けを白く遙けく梓川見ゆ

バス停はもう水浸し来ないなら来なくてもいいから待っている

陸奥みちのくをふたわけざまにそびえたまふ蔵王の山の雲の中に立つ

薄暗い頃に目覚めてジャスミンの香りに喉をしめらせてゆく

しろじろとペンキ塗られし朝をゆきこの清潔さ不安なばかり

うまく言えたためしがないなそのままのあなたにもわたしにも吹く風

口ふれし水の感じをたもてれどさかりきていまとほき粗沢あらさは

底辺を高さと掛けて二で割ったことを私は必ず許さない

山中に木ありて木には枝ありて枝に一羽を止まらせている

朝顔は咲かなかったし約束も守れなかった ブローチを刺す

橋脚ははかなき寄辺よるべひたひたと河口をのぼる夕べの水の

ゆつたりと生きゆく人とゆつたりと死にゆく人が花の真下を

やがて海へ出る夏の川あかるくてわれは映されながら沿いゆく

こわいのよ われに似る子が突然に空の奥処を指さすことも

核実験大成功と歓声の上りたる場所トリニティサイト

僕たちは生きる、わらう、たべる、ねむる、へんにあかるい共同墓地で

捨て身の如くねむれる猫のゐて海はふくらみを夕べ増しくる

わたあめ屋歩めばさらにわたあめ屋売る人の顔みな同じなる

雲を見て今得し歌の片はしを山の鵯鳥ひよどり鳴けば忘れぬ

吉野家の向かいの客が食べ終わりほぼ同じ客がその席に着く

白きシーツに黒き二つの眼が澄みてしづかに人の瞬きをする

急行を待つ行列のうしろでは「オランウータン食べられますか」

くろがねと陶器と硝子と風鈴三つおのづから鳴りおのがじし鳴る

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