2019年10月のアーカイブ

米川千嘉子/はるばると泥土に流されゆくものか小さき鉄の黒文鎮も

訂正のお知らせ

斉藤斎藤/夫と剣と玉とはんこがもうひとつぞろぞろとゆくうしろから妻

米川千嘉子/防災無線豪雨のなかに音にごり耳とほき母の孤独おもへり

篠弘/モンブラン銀のシャープの黒ずみをひと夜すがらに磨き上げたる

平山公一/溶鉱炉百八メートルの頂に製鉄所三百万坪を瞰る

中地俊夫/島田修三は島田修二に似る歌を作らざるゆゑ島田修三

嵯峨直樹/五指の間に五指をうずめる 薄らかな光ちらばる夜の市街地

古谷智子/夕映えのこゑはしづかに充ちあふれはるかな死者をまた呼びもどす

嵯峨直樹/さえずりをか細い茎にひびかせて黄の花すっくり花野に立てり

吉野昌夫/神宮競技場ここ聖域にして送らるる学徒幾万に雨ふり注ぐ

嵯峨直樹/ベビーカー向こうの闇より現れて赤子の手足細かく揺れる

和嶋勝利/謝罪ならいらぬとなれば出る幕もなく出るとこに出ることとなる

大森静佳/かわるがわる松ぼっくりを蹴りながらきみとこの世を横切ってゆく

細川謙三/敗戦の頃の日本を語るのみ老いし感傷を避け来て坐る

大森静佳/顔の奥になにかが灯っているひとだ風に破れた駅舎のように

神山卓也/守るべきはヤマか雇用かと自問しつつ金貸して来し矛盾も終はる

大森静佳/馬の腹に手を押しあてる少しだけ馬の裡なる滝を暗くして

中野菊夫/妻が植ゑし大切な葱をぬきてきぬこの幼子らかくて育ちゆけ

岡井隆/記憶違ひはさう想ひたい欲念の素顔でもある 秋の風吹く

田中拓也/「さがなし」の意味を説きつつ思い出す者三人(みたり)あり心の中に

奥村晃作/副都心線で横浜直通の地下鉄赤塚駅を利用す

花山多佳子/それは私が夜中に見てゐたドラマだと娘が言ひぬ夢を語れば

斉藤斎藤/天然の冷蔵庫だなを聞きたくて父と市バスにゆられとります

梅本武義/闘いはここからという労働歌専務となれど口ずさみおり

久々湊盈子/咲き盛る白さるすべりを揉みしだく南西の風ゆううつニッポン

辻村雅子/あとかたは何もなけれど平林寺という地名残れりそれのみである

月別アーカイブ


著者別アーカイブ