2020年05月のアーカイブ

春の岬旅のをはりの鴎どり
うきつゝとほくなりにけるかも

雪を拂ひ 乗りてはおり行く人を見て、つくづくと居り。汽車のひと日を

何といふ死のまぶしさよ道の辺の馬酔木の花は陽にけぶりゐて

木漏れ日を浴び続ければ白樺の木になりそうなほどひとりなり

窓のそとに木や空や屋根のほんとうにあることがふと恐ろしくなる

囀りの声すでに刺すごとく森には森のゐたたまれなさ

雪に傘、あはれむやみにあかるくて生きて負ふ苦をわれはうたがふ

いにしへに恋ふる鳥かも弓弦葉ゆづるはのみ井の上より鳴き渡りゆく

さざなみの下はあかるき死の広場白き脊椎を曳きたる頭蓋

罌粟咲けば罌粟にあふるるおもひありてひと日陶器のごとく過ぐさむ

おうどんに舌を焼かれて復讐のうどん博士は海原をゆく

五十年使い慣れたるこの辞書のやぶれかぶれの我の老年

いななきて馬はめざめぬみすずかる信濃高原しなのたかはら雪真白なり

閉店のやさしい音楽が流れて、旅を勧めてくる雑誌を閉じる

「東京に生まれることも才能」と言いし人ありわれもしかおもう

まあそこに居つたらええよ、なんとなくほつと咲いてる木瓜とわたしと

はかなしな夢にゆめみしかげろふのそれもたえぬる中の契は

沼に沈む悲しき馬の嘶きを聞きてあわてて絵本を閉ぢる

新月はまだ宵ながららむとす星のひかりの空にさやけき

ゆらゆらとわれの寝覚めし朝焼けはほのおのようなダリヤのような

問十二、夜空の青を微分せよ。街の明りは無視してもよい

壁のそばに葉が揺れてゐる葉のうらに風が光つてゐる五月であるも

雪の辻ふけてぼうぼうともりくる老婆とわれといれかはるなり

てふてふが一匹東シナ海を渡りきてのち、一大音響

魂のふるさとの海あやかしのよそへる色の月明りかな

あした産む卵を持ったままで飛ぶ 燕は川面すれすれにとぶ

月別アーカイブ


著者別アーカイブ