奔馬なる地球に棲みてわれら百年に満たぬ短き生を終ふるか

          石川恭子『雲も旅人』(2014年)

 

地球上のあらゆるところで地震は発生する。海溝型地震にせよ、活断層地震にせよ、地球という星が活発に活動していることを示す現象である。作者はそれを思って、「奔馬なる地球」と表現した。

地震国である日本に住んでいながら、私たちはつい大地を動かぬものとして捉えがちだ。明日もまた、今日の平穏が訪れると思ってしまう。しかし、実際には、地球は生き物のようなものだ。どんな大きな変動が起きるか、誰も予測できないほどのエネルギーが地下深く蓄えられている。しかも、それは人間の短いスパンとは全く異なるスケールでの活動なのだ。そうしたことを作者は深く把握し、地球と人間の「百年に満たぬ短き生」と対比させてみせる。

この「奔馬」を飼い馴らすことなど、人間には不可能である。どんなに科学技術が進歩しようと、都合よくコントロールすることのかなわぬ「奔馬」だということを、忘れてはならない。こんなにも激しく活動している生き物の表皮に私たちは棲み、自分たちは百年ほどの責任も負えないにも関わらず、放射性廃棄物を半永久的に貯蔵する処分場などを作っているのである。

 

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