松村 由利子


下の子をほめれば上は寂しさうきやうだいは皆カインとアベル

         大崎瀬都『メロンパン』(2014年)

 

聖書には、現代人が読むとよく分からないことがいろいろ出てくる。「カインとアベル」の話もその一つである。

兄、カインと弟、アベルが、それぞれ神に供えものを捧げた。神はアベルの供えものを喜ばれたが、カインの供えものは顧みなかった。カインは憤り、弟を殺してしまう。神は彼に、その地を離れなければならないと通告し、カインはエデンの東へ行って住むことになった――。

スタインベックの『エデンの東』は、この話からとられており、親の愛情を巡る葛藤はカイン・コンプレックスと名付けられている。たぶん、親からすれば「同じように愛情を注いでいるのに、どうして子どもたちはきょうだい同士で張り合うのだろう」と思うのだろう。この歌では、その嘆息するような思いがとてもよく伝わってくる。

「きやうだいは皆カインとアベル」という下の句の断定が重い。子どもはみな、親の愛情を得ようとひたむきで、きょうだいであろうと、対抗意識を燃やしてしまうものなのだ。親の方は、えこひいきをするなどという気持ちは微塵もなく、その場その場で叱ったり褒めたりしているのに……。

はたと気づいた。神も、同じなのかもしれない。人間は自分のものさしで、他人と比べて不公平だと思ったりするけれど、神の目から見れば帳尻は合っているのだ、たぶん。

まだ幼い子どもたちの様子が目に浮かび、ほほ笑ましくも思う一首である。