三井 修


なきひとに会いにゆく旅ナトリウムランプのあかりちぎれちぎれて

佐藤弓生『モーヴ色のあめふる』(2015年、書肆侃侃房)

 ナトリウムランプとは、ガラス管に封入したナトリウム蒸気のアーク放電による発光を利用したランプである。橙黄色の単色光で、色の見分けが困難なため、一般の照明には不向きであるが、単色光であることが視認性向上などで有利となっているために、主として、道路やトンネル内の照明に利用されている。。

 この一首、「なきひとに会いにいく」だから、親戚か知人・友人の葬儀か、或いは法要に出席のために高速道路を走行しているのであろう。もし、トンネルではないと想定すると、照明を点けているのは夜であろうから、予め予定の立つ法要ではなく、突然の訃報で、取り急ぎ駆けつける途中という可能性が高くなる。「ちぎれちぎてて」というのは、ナトリウムランプが道路(或いはトンネル内)に数メートル置きに設置されているので、高速で走行すると、光源がとびとびに視野を過ぎるということであろう。

 上記の通り、ナトリウムランプは橙黄色の光であるから、自然光に比較して、不自然な印象を受ける。それがちぎれちぎれに視野を過ぎていくということは、何か不穏というか、不吉な印象を醸し出す。そのことが作者の心の中の深い哀しみに重なり合っているように思える。

 「ナトリウムランプ」というような外国語は、一般的に短歌のリズムに乗せるのが難しいが、これは句割れというレトリックを巧みに利用して、見事に定型に収まった。

   おはじきがお金に代わり、ながいながいあそびのはての生のはじまり

   地をたたく白杖の音しきりなり地中の水をたどるごとくに

   鳩は飛ぶ 風切羽の内側にゆうべの月のにおいをためて