大松 達知


砂浜に立ち尽くしてもなにを見てゐるのか分からないときがある

目黒哲朗『CANNABIS(カナビス)』2000

 

 作者は1971年生まれ。

 歌集名のカナビスとは、大麻の一種。

 内容もなかなかきわどいところを突く歌集である。

 ただ砂浜に立って辺りを見回したのではない。自分で「立ち尽くす」と実感するまでいつまでもいつまでも立った砂浜なのだ。

 なぜ立ち尽くしたのか。海の広さに驚いたのか。海の青さに圧倒されたのか。海の優しさに包まれたかったのか。海の厳しさに抵抗したかったのか。

 

 とにかく、一人の男が海に立ち向かった。

 すると、ときに何を見ているのかわからなくなったという。

 潮風を感じ、太陽の光を感じ、砂の匂いを感じ、湿度を感じ、波の音を感じ、、、、、。

 触角や嗅覚などの感覚が体内からせりあがってきて、視覚を超えたのだろうか。

 海を目の前にして、海に育ったころの太古の生物の記憶が呼び覚まされたのかもしれない。

 言葉は茫洋としていながら、何かをつかみ取ろうと必死にアンテナを伸ばしているような歌。青春の歌の良さとはこういうところにあるのだ。