文明開化に置いてけぼりを喰ふほか無し一点一画文字書くやうでは

清水房雄『碌々散吟集』(2005年)

 

 

 

文明開化というと、まずは明治初めの近代化のことを思う、。
そんなことばから「置いてけぼり」とくだけた言い方を続け、はなからトボけた味を出す。

 

何もかも機械化されて、このごろは文字を書くのもみんなパソコンだ。こんな時代に、一字ずつのすみずみまでを意識において、ていねいに書いているようでは、時代遅れになるのもやむをえない。

 

とりあえずの意味はそんなところだが、「一点一画」のことばの選びには、一点一画疎かにせずの気概、そう教えられた者の誇りがこめられていることを感じる。

 

韻律においても、i音や促音を含むここの部分は、際立った張りをみせる。

 

時代に対峙する己を出しつつ、しかしやはり、うたいだし方が、妙な味わいで一首にかぶさるのだ。

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