星が光を長く患ういっぽうで違法アップロードのアニメ

碓井やすこ(「船室vol.1」)

「○○が○○を患ういっぽうで△△」の構成だけを見ると、もう一方の△△には患いがないもの、悩みや苦しみがないものが置かれると期待してしまう。しかし「違法アップロードのアニメ」はこの期待を浅く裏切ってくる。

人間からすればほとんど永遠とも言えるような長い時間をかけて、恒星はみずからを燃やしながら光を発し続ける。変えられないもの、先天的なものを忌避する感覚や不全感が「長く患う」から読み取れる。

星の「光」のもういっぽうに、モニターの四角い光がある。画面上で光を放っているのはネット上に違法アップロードされたアニメで、複製を繰り返しながら人から人へとデータは広がっていく。「患う」を認識する主体は「星」だろうか、それともアニメのデータに「違法」を感じ取るのと同じように、「星」を観測する主体(=作者)だろうか。「いっぽう」を認識する主体を中心に見るなら、「星」が光を患うと感じる主体も「アニメ」が違法であると感じる主体も、一人の観測の主体となる。

観測の主体は「アニメ」のデータが置かれているサイト名のような場所を見て、記号的に「違法」を認識しているだろう。いっぽうで「星」が置かれている場所=空には記号が一切ないため、主体が星の光や空の様子から能動的に意味を取り出す必要がある。「いっぽう」の両端に置かれているのは「星」と「アニメ」という名詞で、どちらも光を発する共通点を持っているが、「患う」「違法」という状態の認識は、能動と受動に分けられる。

星は複製不可能で一つしか存在しないのとは異なって、アニメは無限に複製できる。今主体が見ているのは違法だが、同時に、適法であるデータが他の場所にある。あるべき状態のものが他の場所にある。そして手が届かない。ここに主体の屈折感があるように思う。

笛のような何かに触れてたしかめる鏡の向こうではこれが顔/「水と脈」(パンパ1)

入口も出口もないが雨に木の濡れるかぎりに寺院の匂い/同

「笛のような何かに触れて」「入口も出口もない」皮膜に覆われて向こうが見えない息苦しさが、言葉となってあらわれてくる。

 

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