忍ぶ軒端に 瓢箪は植ゑてな 置いてな 這はせて生らすな 心の連れて ひょひょらひょ ひょめくに

 

                                   『閑吟集』

 

 「植ゑてな」「置いてな」「這はせて生らすな」は、植えたい、置きたい、這わせて生らせたいの意。忍んで暮らす家の軒先に瓢箪を植えて這わせて実を生らせたい。そうすれば、心も不思議に軽くなって、ひょひょらひょとでも言いたくなるだろう、くらいに解釈すれば良いだろうか。何といっても「ひょひょらひょ ひょめくに」が愉快だ。瓢箪が風に吹かれて揺れる感じでもあり、瓢箪が生ってこころ浮き立つ様子を表わしているようにも読める。「ひょめく」なんという造語(動詞?)は痛快で、読み手のこころもひょひょらひょと軽くなる。

 こういう表現はとりあえず手放しで面白がるしかない。そして、口語のような戯れ言のような言葉のなかに、意外と心理や気分の率直な所が出ているように思う。瓢箪という何でもない植物を育てるよろこび、瓢箪の実の揺れと心の軽やかさの重なりには、庶民的な日常の気分や心の機微があり、「ひょひょらひょ」と手渡される。

 

 

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