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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
三井 修
若き日の過誤かへるまで畳目のしづかさにしむ秋雨の音
わかくさの妻の日々よりもどりたる友もわたしも少女ではなく
好まざる昔語(むかしがた)りし我つひに結社の稗田阿礼(ひえだのあれ)かと嘲ふ
邸にはほど遠き家ごめんなさい父母舅みなは住めない
工事現場の荒れたる地表おほひつつ銀を展(の)べゆくさらの春雪
縄跳びの描ける繭にひとりずつ児らはおのれを閉じ込めて跳ぶ
雪の上に雪積む小路を歩み来ぬ裂けし一樹の立つところまで
飼ひ主はわが家の犬を甲として見かくる犬を乙と決めこむ
けさの羽(つばさ)はたしかに扇われをして空のかなたに溺れよと招(を)ぐ
土器のかたち焼き固めゆく火ぢからは骸(むくろ)のかたち消してしまへり
出かけんと忙しく化粧するわれの手元見つめる眼差しのあり
八階から見ゆる桜は小さかり今逝きましたと器械に告げて
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