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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
棚木 恒寿
驟雨に濡れし鉄骨の乾く時われは感情の処理にとまどふ
凍てつきし地(つち)に正午の光澄みものの象を残しつつ溶く
ヒヤシンス薄紫に咲きにけりはじめて心顫ひそめし日
おどろきて歩み逃げ去る丹頂は頸さし伸べて描かれにけり
連続通り魔出没せしとふ路地の辺にうち捨てられたる扉(ドア)いち枚
氷塊に映りておれるわがからだ輝く鋸(のこ)に引かれはじめつ
雨ゆゑにブルドーザーが休む日の地表いまだけ本音のにほひ
妬心を鎮めゐたれば家並より炬火(きよくわ)のやうなる月のぼりくる
白堊(チョーク)をばきゝとひゞかせ一つひく文字のあとより起るかなしみ
しらしらと老いのしら髪ぞ流れたる落葉の中のたそがれの川
たつぷりとみづ注ぎても焼けてゐる砂地かひとをまた恋ひてをり
かつと燃えるウヰスキイの夏ぞら 弱々とたかくのぼらぬ煙突のけむり
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