2012年02月のアーカイブ

遠き国の雪積む貨車が目前(まさき)を過ぎ瞳吸はるるわれと少年

桐のはな医院のうらにほのみえてやわなるものをおもう ゆうぐれ

秀吉が大河ドラマであっさりと死んで開票三十分前

春の日の男の喉に球根のような突起は光りていたり

春の風いま吹けよそよ、そよとなほこほりてとざすきまじめの顔へ

水の面を出でこし鴨の歩きやう彼の水掻きの色に感じのあり

嬉々として人々は見きX線通したるみづからの手、足、頭

月足らずで生まれたらしい弟を補うようにつきのひかりは

竹群の霜とけて日にかがよへり無数なる童謡うまるるごとく

凍死せし犬蹴とばせば木のごとき音を放ちて雪にうづもる

どうしても行くというなら行けばいい蝶結びふたつ胸の上にのせ

手袋の指が充血したるまま捨てられてゐて舗道かがやく

ぎんがみを解けばかすかに霧立ちて角(かど)やはらかきチョコレート出づ

ともすればかろきねたみのきざし来る日かなかなしくものなど縫はむ

鼻孔(はな)に入(い)る異物を瞬時に出ださんと赤子は顔のまなかを縮む

唐突に物干し竿は現れて隣家に人が住み始めたり

回覧板読むまへにシャチハタの判を押す癖は変はらず母の日々(にちにち)

冷や奴の白き四つ角曲がりきて堂々めぐりに日の暮れてゆく

含み笑いをしながら視線逸らしたる生徒をぼくの若さは叱る

にんげんはそう簡単には死なぬゆえ桜の下に祖母を立たしむ

雪底に押しつぶされし根の怒りある朝噴きて水仙となる

背中だけ見せて寝ている村の井戸を汚したせいで帰れぬ人が

区役所の窓口に立ちなんとなくたみくさの感じにぎこちなくをり

自転車の銀の車体にこびりつく昼のひかりは泡のごとしも

かのときの二月岬の潮風になびきてありしえり巻きのQ

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