2014年09月のアーカイブ

夕されば野辺の秋風身にしみて鶉鳴くなり深草の里

せとものゝひゞわれのごとくほそえだは淋しく白きそらをわかちぬ

青みかん剝けば亡き母うら若く寄り添ふごとしよき香りする

駄菓子屋はグラジオラスも売りていき裏に小さき畑をもてば

黄の蝶の林に住むは幽けかり落葉松も芽ぶきそめにし

秋風に見つつかなしも蟹ふたつ相寄り激流に沈みゆきたり

秋彼岸非日常のマント着て地獄の君に会いにいこうか

おしまい。と夕ぐれが云う窓が云うアイロン台の脚を折るとき

夕かげる桜木のもとわが想ふひとりのために花よやすらへ

夜の路抱(だ)き歩みせし兒の足袋のぬげたる足の冷たかりしも

秋たけし獄舎はかなし夜ごと夜ごと/鈴虫の音の/細ぼそり行く

熱もたぬ夕赤ひかりしたたれり馬刀葉椎のしみらの葉群

一ぽんの蠟燭の灯に顔よせて語るは寂し生きのこりつる

うなだれし秋海棠にふる雨はいたくはふらず只白くあれな

雲を踏み嵐を攀て御熊野の果無し山の果も見しかな

遠山の時雨にしづむ昼つ方われと暮らしてさびしいか君

なき人の/今日は、七日になりぬらむ。/ 遇ふ人も/ あふ人も、/みな 旅びと 

ねこじやらし穂のふはふはを手握(たにぎ)ればぬくし秋陽を溜めたる穂先

群雀ねぐらあらそふ竹村のおくまであかく夕日さすなり

四ツ橋筋に欄間屋ありてうつくしき欄間の彫りにひびく街音

よもの海みなはらからと思ふ世になど波風のたちさわぐらむ

朝くらき花屋の土間に包まれて仮死せるごとき白百合の束

もの言へば 泣けくるものを。通夜ふけて、親しき友の また一人着く

馬鹿げたる考へがぐんぐん大きくなりキャベツなどが大きくなりゆくに似る

いまははた 老いかゞまりて、誰よりもかれよりも 低き しはぶきをする

一口のパンが喉(のみど)を通った日私は真紅の薔薇になった

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