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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
今井 恵子
みづからの雨のしたたりにあぢさゐの花は揺るるにおのおのにして
身はたとへ武蔵の野べに朽つるともとゞめ置かまし日本魂やまとだましひ
塹壕に最後までありて死行きし娘子軍ぢやうしぐんの死体まだ暖かに
ゆるきゃらの群るるをみれば暗き世の百鬼夜行のあはれ滲める
ほととぎす霧這ひ歩く大空のつづきの廊の冷たきに聞く
手をたれて(いま手をたれて病むひとの手の数に慄然と)われあり
垂直に振子ぞ垂れて動かざる時計ひとつありわが枕上がみ
なにげなく摑んだ指に冷たくて手すりを夏の骨と思えり
空の奥へ空が続いてゆく深さ父となる日の土管に座る
親馬に添ひて野を来る仔馬見ゆ親はかなしきものにかもあらむ
亡き人を語りて書きてそののちにもつと本当のことを思ひ出す
片耳をそっとはなした電話から鎖のように声はこぼれる
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