2018年04月のアーカイブ

月面に脚(あし)が降り立つそのときもわれらは愛し愛されたきを

友だちが来てテーブルをくっつける 新しいテーブルの大きさ

前足に遅れまじとてうしろ足けんめいうごく横長の犬

カフェラテの泡にたゆたう葉脈をひとくちごとに引きのばしおり

ガラス一枚の外は奈落の深さにて五十階に食む鴨の胸肉

ソファーに座りたるとき尻に触れしものあり声をあげて悔やめり

わが影に燕入りたり夕光(ゆうかげ)に折れ曲がるわが胸のあたりに

相槌を律義に打ちて馴(な)寄りくる生徒ありわれは何も与えず

あらくさにしんしん死んでゆける夏黄のフリスビーと毛深き地蜂

おびただしき水仙の白咲かしめてケアホームの庭 愛は片寄る

カバに手を掛けてるヒトが穴だった顔はめパネルやればよかった

妻の傘にわが傘ふれて干されゐる春の夜をひとりひとりのねむり

階段の底までくだり昼くらきコーヒー店に来てまづ眠る

金箔のきらめきこぼし角を曲がる霊柩車なし冬至のまちに

足裏より夏来て床に滴りしすいかの匂いまばゆい午後だ

宇宙から見れば今死ぬ吾の手が今死ぬ母の手を握りをり

峠から無限にひろがる星空に吸えないタバコをすわされそうで

母死なすことを決めたるわがあたま気づけば母が撫でてゐるなり

コーヒーの湯気を狼煙に星びとの西荻窪は荻窪の西

春の船、それからひかり溜め込んでゆっくり出航する夏の船

雪を踏むローファーの脚うしろから見ていて自分が椿と気づく

担架にて運ばれおらぶ父の声妹は録りいまだに聞かず

夕照はしづかに展くこの谷のPARCO三基を墓碑となすまで

ドアの窓の真ん中にレモンドレッシングの広告はあり手のひらほどの

セイムタイム セイムチャンネル セイムライフ 悪夢の続きだったとしても

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