2020年01月のアーカイブ

椽臺に帽子を脱ぎて仰ぎ見るその紅葉もみぢの木このもみぢの木

深海魚光に遠く住むものはつひにまなこも失ふとあり

おとなしく人の流れにはこばれて道具屋筋で脇にそれたり

むきだしのそんざいならぬもののなき炎昼をつりがねの撞かるる

かどやなぎあかるくきて広池ひろいけの向うをとほる滊車きしゃあらは

ふるとしの雪やいづくとあざかへしこのとしこの日趾とふなゆめ

明けきらぬサントス港に船出待つニュークロップが青く匂へり

「悪の華」と「実践理性批判」とがせせら笑へり肩をならべて

ベビー服のうえを模様が通りすぎ赤ちゃんはみな電球のよう

わが心深き底ありよろこびうれひの波もとどかじと思ふ

きまかせに七羽はうごく刻々と水のおもての景かへながら

偶然の中に転がる永遠を
いっしょにみつけてくれたのはきみ

跳ねてゐる金魚がしだいに汚れゆく大地震おほなゐの朝くりかへしみる

そうだよこれは夢からこぼれ落ちた炎 胸に灯してまた夢を見る

憧れのなくなりしことが微かなるあこがれとなり生かされてゐる

ミュージカルについてあまり悪く言わなかったことが結果的にプラスに働いた

大丸のビルへ垂直にそらぞ垂るそらはざらざらの手触りであり

滝川や浪もくだけて石の火の出でけるものとちる螢かな

菓子ぱんのふうわりあるのが砂濱の夜に弾力となり椅子たのしくす

なんとこの素敵な日よりの薔薇墻ばらがきへピストルおとし手のやりばなき

ゆくバスの窓に見てゐる大阪の続きのごときベルリンの記憶

へーゲルを読みたる夕は三分計り熱あがりたり止めんとは思ふ

ひつじたちは佇ちながら
草をはむ 無言を
古着のように羽織って

氷片にふるるがごとくめざめたり患(や)むこと神にえらばれたるや

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