2020年04月のアーカイブ

銀の燭かすかに吊し目覚めてはねては青き花食べにけり

キリストの生きをりし世を思はしめ無花果いちじくの葉に蠅が群れゐる

機関庫の春のさびしさ鳩さへも白きはね染むその炭塵に

時々、ひばりは空にのぼりゆき人間のすることを見るのです

刺青は沖に菫の色もてりはてしなく海にそそぐ雪片

ジャングルジムに少年たちがぎっしりと本を読んだりぶらさがったり

夏ははやいきいたづき苦しむかつがひたる蝶むなしきに舞ふ

隼人はやひとの薩摩の瀬戸を雲居なす遠くも吾はけふ見つるかも

百円で上下するのみの飛行機に乗りしよろこびも上質のもの

春の獅子座脚上げ歩むこの夜すぎ きみこそはとはの歩行者

手をとられなくてもできて鳩それももう瞠きつぱなしの鳩を

あそぶごと雲のうごける夕まぐれ近やま暗く遠やま明し

きみはきみばかりを愛しぼくはぼくばかりのおもいに逢う星の夜

三宮、元町過ぎてさびしかりうすくけぶれる山側に出て

ゆふづつのかゆきかくゆき春秋をがまなざしに揺るる星こそ

ことごとく人眠らせて国道を観光バスは過ぎてゆきたり

孵卵器の卵くるしげに歪むころ不潔な神話世に流布しだす

どのやうな手もやはらかにしてくれるクリームください焚火の色の

水面にかへる刹那の水しぶき激しく消えしものを見たりき

星あかりのわずかに届く闇を来てものやわらかな音楽ひとつ

意志表示せまり声なきこえを背にただ掌のなかにマッチ擦るのみ

ひとりぼろタクシーのなかで、へし折れたやうな街の後ずさるのを感じた

光透く翅をひろげし夜の蛾が我が臥す上を過ぎしときのま

前の前をゆくひとがさしているものの架空の植物の柄の傘 

暖冬の室内にて孵す紋白蝶複製モネをこえ曇りガラスに

南風モウパツサンがをみな子のふくら脛吹くよき愁ひ吹く

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