百円で上下するのみの飛行機に乗りしよろこびも上質のもの

内山晶太「蠅がつく」『外出』二号(2020年)

 大抵のものはお金で動く。それは子供向け遊具の飛行機とて同じこと。その額が百円玉一枚とはいえ、そして遊具といっても単におざなりな上下運動しかしないものとはいってもやはり「上質の」よろこびを与えてくれる。

あるいは、お金で動かないものにしてみても。このあいだ真夜中の公園で久しぶりにブランコに乗ってみたら、やはりその喜びは上質のものといってよかった。残念ながら今の自分は肥ってしまって、たぶんこの種の遊具に乗ることは許されないのだが、百円でほんのわずかの時間だけ味わえるあの気だるい上下運動のよろこびを、この一首が擬似的にでも許してくれたように感じる。