松村 由利子


つなぐほどさみしいはるのゆびさきをそれでもかさねあって、みずいろ

          松木秀『RERA』(2010年)

 

3月はまだ肌寒い。粋がって薄いスプリングコートを羽織っても、厚手のコートが恋しくなる。とは言え、どんなに風が冷たくても手袋なんてしないから、「はるのゆびさき」は冷たいのだけれど、冷たさの理由はそれだけだろうか?

この歌の二人は、遠からず別れることを意識しているのかもしれない。春という季節は、進学や人事異動などがあり、別れの季節でもある。思いを寄せ合いながらも、離ればなれにならなければならない二人だから、「つなぐほどさみしい」のではないかと読んだ。

すべてひらがなで表記された一首の淡い感じが、結句の「みずいろ」ととても響き合う。「みずいろ」は、寒さの残る早春の空の色であると同時に、二人の恋の初々しさを表しているのではないだろうか。まだ手をつなぎ合い、心をつなぎ合って間もない関係だから、その将来は輪郭がはっきりしない。

作者は警句にも似た、鋭い作風の歌で知られるが、こんなやわらかな歌も作るのである。「つなぐほど」「それでも」といった言葉がたいへん周到に用いられており、上質な知を感じさせる。