松村 由利子


一週間お疲れ様のご褒美に一人で過ごすスターバックス

         吉本万登賀『ひだまり』(2015年)

 

作者は、幼い女児を育てながら教師として働いている。この歌では、「一人」がキーワードだと思う。

なかなか理解されないが、小さな子を育てている親、特に母親の悩みは、一人になる時間がないことである。働く母親のサポート事業に携わった人から聞いたところによると、たった一時間でよいから、彼女たちが一人になる時間を提供することが本当に大事なのだという。ことばでコミュニケーションできない幼い子との一対一の関係は、初めて親になった人にはかなりのストレスを強いる。自分が一人のおとなであることを再認識し、ゆったりと心を遊ばせる、ほんの少しの時間がどれほど親たちを支えてくれることだろう。

この作者は、勤めを持っているから、「一週間お疲れ様」は理解しやすいが、たとえ専業主婦であっても、いや、専業主婦であれば尚のこと、息抜きは必要なのだ。一人で飲む一杯のコーヒーが与えてくれるものの大きさを、私も知っている。

洒落た喫茶店ではない。「スターバックス」なのである。変哲のないマグカップか、紙コップで飲むチェーン店のコーヒーだけれども、それが明日への活力となる。何とまあ、ささやかな「ご褒美」であろう。月に1度でもよい、シングルマザーが1時間だけ1人になれるような保育サービスを実施できたら、どんなに喜ばれることだろう。もしかすると、子どもへの虐待やネグレクトを防止することにもつながるのではないかと、夢想している。

 

編集部より:吉本さんの「吉」の字は、異字体で本来は3画目(士の下段の横画)が長いのですが、ここでは、便宜上、「吉」を使用しております。ご了承くださいませ。