松村 由利子


2040年の夏休みぼくらは懐かしいグーグルで祝祭を呼びだした  

        フラワーしげる『ビットとデシベル』(2015年)

 

グーグルに限らず、初めて検索エンジンで検索したときの興奮は、「祝祭」の気分に近かったかもしれない。「こんなことができるなんて!」という素朴な驚きは、長い夏休みが始まる喜びや未知の世界へと続く入り口を見つけた感動に似ていた。

しかし、ここ十数年、情報通信における技術革新のスピードはものすごく速くて、ついてゆくだけで精一杯だ。「グーグル」さえも「懐かしい」ものになり果てる2040年の状況なんて、想像することができない。

「ぼくら」が、わざわざ過去の遺物になった「グーグル」で「祝祭」を呼びだそうとするのは、もはや2040年のころには「祝祭」的なものが世界に残っていないからなのだろうか。人類滅亡も近いSF短篇を読むようなぞくぞくした感じが漂う。

とはいえ、やはりこの一首には、どこか冒険してやろうという「ぼくら」の弾む気持ちが満ちている。少年は、いつの時代も変わらない。「懐かしい」という言葉から、「ぼくら」がリアルタイムの少年でない可能性もあるが、一首全体の印象は、夏休みの始まりに特有な輝きで明るい。