松村 由利子


ゆびあはせ小窓つくれば三角のあはひをよぎるあの夏の雲 

       紀水章生『風のむすびめ』(2014年)

 

この歌を読んだ瞬間、安房直子の童話「きつねの窓」を思い出した。

鉄砲をかついだ「ぼく」は山で迷い、不思議な子どもと出会う。それは、染め物屋の子どもに化けたるきつねだった。きつねは、「ぼく」に両手の親指とひとさし指、つまり四本の指で「ひし形の窓」を作ってみせる。ききょうの花の汁で指を青く染め、そのひし形の窓を上にかざしてのぞいてみると、会いたい人や見たい景色が見えるという――そんなファンタジーである。

歌の「小窓」がひし形でなく「三角」になっているのは、たぶん親指を下方に広げず、親指と親指を合わせて一辺にするからだ。

ともあれ、指を合わせて「小窓」を作り、そこから空をのぞいてみる、という行為にはとても心を惹かれる。この歌の作者が、安房直子の童話を読んだかどうかは定かではないが、指で窓を作ってみる姿には少年のような心を感じる。作者は実際、眼前の雲ではなく「あの夏の雲」を見ることができたのだ。

あなたも、空を見上げて「小窓」から覗いてごらんなさい。もしかしたら、過ぎ去ったあの日の光景が見えるかもしれない。