河野裕子『葦舟』(2009年)
如月、二月、春はそこまでながら、とても寒い時期。
でも、たまにあたたかい日が混じる。雨もぬくい。
八つ手の花々は、そんな雨を敏感に受けてなんだか楽しそう。あの白っぽい花は地味で、こんな風にうたわれるのは珍しい。
どんな歌があるかと、ちょっとさがしてみる。
・窓の外(と)に白き八つ手の花咲きてこころ寂しき冬は来にけり 島木赤彦
・庭隅に八つ手の花も咲きけり落葉は深く積りたるかな 尾山篤二郎
やはり寂しい。
小花を球状につけた花が、雨にはじかれて上下するさまはかわいらしく、お前たちもやっぱり嬉しいんだね、と声をかけたくなるような感じなのだろう。ぱちぱち、というオノマトペが、その思いにまるで応えるかのような花の感じをよく伝える。
八つ手の花といっしょに弾みたくなるな。