ひとり きて しま の やしろ に くるる ひ を はしら に よりて ききし しほ の ね 

會津八一『自註鹿鳴集』(新潮文庫:1969年)

自注を敢えて無視して読んでみると、なおのこと寂しさが募るような歌である。しまのやしろ、と書かれると人もほとんどよりつかない小さなほこらのようなものを思わされるし、柱があっても立派なものではなく、ごく粗末なもののように感じられる。
潮の音が聞こえるのだから海からほど近い神社なのだろう。海に沈む夕日を前にして、島をつかさどるはずの「やしろ」はいかにもはかなげである。
本来は厳島神社を歌った雄大な歌なのだが……。