吉田隼人


おもちゃ売り場の階までのこと階のこと記憶のどこをあたってもこわい

岡野大嗣『たやすみなさい』(書肆侃侃房:2019年)

 楽しみで仕方なかったはずのおもちゃ売り場までの記憶、おもちゃ売り場に着いてからの記憶がいっぺんに塗り替えられるような不穏な一首である。「記憶のどこをあたってもこわい」というのだから、何度連れて行かれても常に怖かったわけで、その理由を探ろうとすると暗闇に落ち込んでしまいそうなのがまた恐ろしい。

読みどころはやはり「階までのこと階のこと」であろう。ふつうならおもちゃ売り場とだけ名指したら気が済んでしまいそうなところに、そこに至るまでの階段、ないしエスカレーターやエレベーターの記憶までも混ぜ込んでくることでより恐ろしさが立体的になる。